ステンレス(Stainless Steel)は、Stain(錆び)がless(少ない)という名前の通り、「さびない」という意味です。
日本国内で実用された1960年代以降、古くは「さびない鋼」とか「不銹鋼」という名で呼ばれていましたが、最近では「ステンレス鋼」にほぼ統一されました。
名前の示す通りステンレス鋼は一般の鋼に比較すると極めてすぐれた耐食性を有する材料ですが、特定の環境、使用条件の下では「さびる」ことがありますので正しい使い方をする事が大切です。
ステンレス鋼とは鉄に少なくとも10.5%以上のクロムを含有した合金鋼の総称です。
鉄の最大の弱点である「さび」を防止するように改良されており、耐食性・耐久性・意匠性・耐火性・低温特性・加工性などで非常に優れた特性を備えていることから、流し台、浴槽、業務用厨房、ガスレンジ、台所用品等の我々の生活に身近なものから、建材、自動車部品、医療機器、化学プラント、原子力関係等まで、いろいろな分野に使用されています。
またメンテナンスが容易であることも大きな特長です。
環境に対する社会の関心が高まるなかで、ステンレスは100%リサイクル可能な材料として高く評価され大変注目されています。
ステンレス鋼は、普通鋼に比べてはるかに耐食性に優れていますが、金や白金と違って絶対にさびない金属ではありません。
使われる環境や使い方によっては、ステンレス鋼も腐食することがありますが、環境に適した鋼種の選択、構造上の工夫などの事前の配慮と、適切な手入れなどの使用上の注意によって、長期にわたり機能を失うことなく使用することができます。
ステンレスのベースは鉄ですが、なぜステンレスはさびにくいのでしょうか?
これには、ステンレスに含まれている成分クロムやニッケルなどが関係しています。
ステンレスを空気中にさらした場合、鉄が酸化するよりも先に、クロムが酸素と結合し、鋼の表面に薄い保護皮膜(不動態化皮膜)を生成します。この不動態皮膜が、鉄と酸素の結合を防御し、錆びや汚れの進行を防ぐ役割を果たします。
不動態化皮膜は100万分の3mm程度の薄いものですが、大変強力な再生能力があり、表面を保護する役割も果たしているので、ステンレスは、非常に錆びにくいのです。
また、ニッケルは、この皮膜をさらに強化する役割を果しています。
ステンレス鋼は、普通鋼に比べてはるかに耐食性に優れていますが、金や白金と違って絶対にさびない金属ではありません。
使われる環境や使い方によっては、ステンレス鋼も腐食することがありますが、環境に適した鋼種の選択、構造上の工夫などの事前の配慮と、適切な手入れなどの使用上の注意によって、長期にわたり機能を失うことなく使用することができます。
特性 | 他材料と比べたときの特徴 |
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(1)物理的特性 | 比重は7.6〜8.1であり、プラスチック(1.2)、セラミック(2.2)アルミ(2.7)、チタン(4.5)に比べて大きく、鉄(7.9)に近く、銅(8.9)よりやや小さい。 |
熱伝導性は、アルミや銅より小さいが、プラスチックやセラミックよりも大きい。 電気抵抗性は全くその逆である。 |
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ステンレス鋼は種類により、磁性、非磁性を示すので、用途により選択することができる。 | |
(2)機械的特性 | アルミ、銅、チタンより強度が高い。優れた靭性を持つ。 |
優れた靭性を持つ。 | |
オーステナイト系ステンレス鋼の中の一部のものは、高い加工硬化特性を持つため、高強度を得ることができる。 | |
降伏点が明確に現れないため、「耐力」が適用される。 | |
(3)高温特性 | プラスチック、アルミ、銅、鉄に比べて高温強度、高温酸化性、高温耐食性に優れている。 |
300℃以上の大気中にさらすと、酸化により変色する。 | |
(4)加工性 | 金属特有の良好な加工成形性を持つ。ただし、アルミや銅より硬く、スプリングバックが大きい。 |
加工硬化特性を活用して厳しい加工を行えるものがある。 | |
素形材加工(鋳造や射出成形)が可能であるが、プラスチックやアルミに比べてやや難しい。 | |
(5)耐食性 | 耐食性はステンレス鋼の最大の特徴であり、大気中や水中で鉄やアルミよりも優れる。 |
鋼種が豊富であり、厳しい腐食環境でも耐えるものを選ぶことができる。 | |
使用環境によっては孔食、すきま腐食、応力腐食割れなどの局部腐食を起こすことがあるので、材料メーカー等の専門家と相談することが望ましい。 | |
(6)接合性 | 溶接(溶融、抵抗)、接着、リベット接合など、接合手段の選択肢が広い。 |
各種溶接法が可能であるが、溶融溶接の場合、良好な溶接を行うには不活性雰囲気で施工することが望ましい。 |
金属材料の性質はその材料が有する成分元素と結晶構造、そしてある形状になるまでに受けた加工条件、および熱処理条件などによって決まります。
ステンレスも例外ではなく私達が身近にみるステンレスの板、棒、線、パイプ、鋳造、鍛造品など形は異なっていますが、それらの性質は上記要素によって決まるもので、形状の違いが本質的な因子とはなっていません。
最も需要の多い板(帯)を念頭にステンレスの物理的および機械的性質について比較します。
材料 | 熱伝導率 (W/m.℃)x102 |
線膨張係数 (x10-6) |
比抵抗 (常温)Ωcm |
密度 (常温)g/cm3 |
平均比熱 (j/kg.℃)x103 |
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銀 | 4.12 | 19 | 1.6×10-6 | 10.49 | 0.28 |
銅 | 3.71 | 16.7 | 1.673×10-6 | 8.93 | 0.38 |
アルミニウム | 1.95 | 23 | 2.69×10-6 | 2.70 | 0.88 |
クロム | 0.96 | 17 | 12.9×10-6 | 7.19 | 0.75 |
クロム | 0.84 | 12.8 | 6.884×10-6 | 8.9 | 0.46 |
炭素鋼 | 0.58 | 11 | 9.71×10-6 | 7.87 | 0.42 |
SUS 430 | 0.26 | 10.4 | 60×10-6 | 7.70 | 0.46 |
SUS 430 | 0.16 | 17.3 | 72×106 | 7.93 | 0.50 |